2011年2月16日水曜日

ベルリンへの旅(サイモン・ラトル氏との出会い)


今日は、サイモン・ラトル氏にお会いしました。これまでの経験から言えることですが、偉大なアーティストというのは、往々にして、芸術面だけでなく人間的にも非常に大きな方が多いのです。例外は殆どありません。逆にコンプレックスのある芸術家や、自分に自信のないミュージシャンは自分を大きく見せようとして見栄をはったり、自慢話をしたり、という傾向にあるようです。


サイモン・ラトル氏も、ビッグ・アーティストのそれに相応しい、豊かな人間性を、お会いした瞬間に感じました。初めて目が合った瞬間、まだ言葉を交わす前から、彼が全て包み隠さずオープンな気持ちで接してくださているのが、察知できました。あ、この人とは気が合いそうだ。私の第6感がそうつぶやきました。側にいるだけで、ポジティブなエネルギーが伝わってきます。素晴らしい芸術を共に作り上げようという時、ポジティブな人間性と相性程大切なものはありません。彼はそうした目に見えないものを全て持っています。


写真:サー・サイモン・ラトル氏と


楽屋の入り口で私を迎え入れてくれた瞬間、両手を大きく広げて包容の挨拶。そして立て続けに、あなたのレコーディングをいくつか聞かせてもらいました、素晴しい演奏ですね、と感想を述べて下さった。私の音楽に興味を持って、忙しい時間の合間に私の音楽を聴いて下さったそのことに感謝すると同時に、この人の前では、素のままの自分でいられる、という安堵感ににた感情がこみ上げてきました。人間性の高さが、芸術性を遥かに超えている、そう感じた瞬間でもありました。


その後、楽屋内のソファーに案内され、そこに座って『アランフェス協奏曲』のプロジェクトについて、色々話をしました。ただ、この作品を演奏するのではなく、どんな思いを込めて演奏するか、そのために指揮者とソリストがどのような方向へ歩んで行くのがよいのか。一緒に何を表現していこうとしているのか、踏み込んだ話に、ラトル氏の芸術に対する真摯な姿も見て取れました。


写真:ベルリンフィル・ホールの玄関

サイモン・ラトル氏に、こころからお礼を述べたい。高貴でありながら謙虚なあなたの姿勢に感銘を受けました。楽屋でのひとときは、私にとって何ものにも代え難い、貴重な時間です。『アランフェス協奏曲』にむかう序章が今始まりました。リハーサルも、本番も、あなたとならきっとうまくいく、そう確信できました。私たちの演奏が、私たちの「クエルダス・デル・アルマ(心の弦)」をきっと美しく奏でてくれるはずです!




0 件のコメント: